有限会社グリーンストック八幡 大分県玖珠郡玖珠町山下 |
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■地域の概況 |
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玖珠町は大分県西部に位置する。九州第一の河川、筑後川の上流に位置し、玖珠川が西に貫流している。玖珠川流域の標高300〜400mの盆地と南北1,200mまでの山間地からなり、東方には4,000haにおよぶ日出生台原野が広がり、総面積は286.44kmで70%が林地で、地形条件は多様である。気象は寒暖の差が激しく、夏期は高温多湿、冬期は霜の害が多い土地柄である。 農業生産額は約40億円で、内訳は肉用牛10億円、米9億円、鶏卵4億円、などとなっている。 農家戸数は1,418戸、うち主業農家は299戸。総人口は18,964人、うち農家人口は5,648人で高齢者が約24%を占める。 耕地面積は249haで水田面積は116ha、普通畑は195ha。牧草地が342haある。肉用牛飼養戸数は352戸、飼養頭数は4,700頭で大分県の7%を占める |
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■経営の推移 |
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(参考)飼養頭数の推移 |
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※記録なし |
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■労働力の構成 |
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■経営・生産活動の内容 |
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1.設立の経緯 有限会社グリーンストック八幡は9年前の平成10年6月に設立されたが、活動経過は24年前に遡る。グリーンストック八幡のある大分県玖珠郡玖珠町の山下地区は典型的な中山間地域で高齢化が進む農業主体の地区であった。この地区の畜産経営は繁殖農家が多く飼養形態は共同牧野も多いことから昔ながらの放牧を取り入れた畜産が行われていたが、昭和58年1月に山下地区の肉用牛後継者グループ(構成員19名)が、高齢飼養農家に対するヘルパー活動を目的として「山牛会」を発足した。その後、高齢飼養者の粗飼料対策としてタイトベーラー等を導入し粗飼料の収穫調製作業を共同で行うようになった。平成6年6月に「山牛会」の構成員3名で任意組織の「八幡農業生産組合」を設立し農作業の受託を行っていたが、4年後の平成10年6月に任意組織の「八幡農業生産組合」から法人組織のグリーンストック八幡を設立した。 その背景として、 1.それぞれが牛を飼いながらの作業受託であったため、両方ともが時間的、感覚的に中途半端になっていたこと。 2・個人経営では規模拡大に限界があること。 3・高齢化、農家戸数の減少に伴う耕作放棄地や粗飼料確保の対策には業務の価値、位置づけを明確にしたほうが働きやすい。 といった理由から組織を法人化することを決意した。 同年9月に構成員3名がそれぞれ飼養していた雌牛39頭を会社が買い上げ、コントラクター部門と肉用牛繁殖経営部門の2本柱によって経営をスタートさせた。 2.グリーンストック八幡の経営理念 本県の畜産経営、中でも肉用牛経営にとって国産稲わらの活用は粗飼料として、また防疫対策からも重要な課題である。多くの肉用牛経営は規模拡大を進め、家畜の飼養管理にかなりの労働力をとられており、稲わら収集や自給飼料生産に時間を割けないのが現状となっている。 このような状況を改善するため、コントラクター部門に主軸をおき、国産粗飼料の自給や地域への供給を目的とし、消費者の求める安全で安心のできる畜産物を生産する体制を構築した。コントラクター部門を維持していくためにも畜産経営の規模拡大が必要条件であり、平成12年5月より繁殖牛の預託も開始し、肉用牛部門としてこれまで段階的に規模の拡大を行い、現在では預託も廃止してコントラクター部門の維持を図っている。 その中で国産粗飼料自給率100%を目指し、安定した繁殖・肥育一貫経営を実践することを経営の柱としている。 1)コントラクター部門 (1)受託作業による地域への貢献 近年畜産農家の高齢化、大規模化が進み粗飼料の確保が難しい現状がある。またトウモロコシ等の穀物は、バイオエタノール需要の増大により飼料価格が高値で推移しているため、畜産経営を圧迫している。今後ますます国産粗飼料の重要性が高まる中で、地域内外での稲わら39haの収集や共同牧野での牧草収集45haの作業受託を行っており、地域の粗飼料供給の一翼を担うまでになっている。 もうひとつの作業受託として、地域内の水稲の作付2.2haや稲刈り18.1haも積極的に取り組み、地域のリーダー的存在となっている。 稲わら等提供する価格は、県、農協、委託者、受託者で構成する「労働協定基準会議」で決定する。地域の畜産の発展に貢献することが前提と考えており、原価程度での提供としている。 ちなみに、グリーンストック八幡の「ストック」は「溜める」以外に「スキーのストック(支える)」という意味も持たせている。 (2)耕作放棄地の解消等地域資源の保全 畜産に限らず耕種農家でも高齢化、後継者不足が進んでいるため、耕作放棄地の解消や農地の維持等、地域資源の保全に大きく貢献している。このことは、小規模農家や高齢者の農家機械操作への不安の軽減や、機械の投資コストの削減に役割をはたしている。また、労働力の少ない畜産農家でもグリーンストックからの粗飼料の供給は、規模拡大への大きな支えとなっている。 (3)畜産経営への生産コスト低減策 生産コストの低減を図るため金銭のやり取りなしで、地域内の共同牧野45haの牧草収集作業を受託しており、作業料として20ha分の草を現物で確保している。これはグリーンストック八幡の畜産経営から見て飼料費の削減であり、委託者には経費の負担軽減となる。高齢化等でできなくなりつつある牧野の管理にもつながる独創的な方策といえる。 (4)台風等緊急時におけるコントラクターの対応 平成16年に受けた台風による地域内の甚大な被害で稲わらが不足した時に、関係機関と連携のもと、グリーンストック八幡が中心となり県内最大の米の産地、宇佐平野より稲わらの供給を行った。これにより県内随一ともいえる畜産地帯を、一コントラクターが救った。このように、緊急時の飼料供給応援部隊としても大きな役割・機能を果たしている。 2)肉用牛繁殖経営部門 (1)一年一産を目指した「ストレス ゼロ」の飼養管理 肉用牛繁殖経営の最も重要なポイントは一年一産である。繁殖経営部門の実績は平均分娩間隔12.2ヶ月で、前年度実績も12.0ヶ月とほぼ一年一産を達成している。種付回数も18年度実績1.4回、前年度も1.3回と良い成績となっている。 ちなみに、協会のコンサル事業による平均分娩間隔の県平均及び50頭規模以上の県平均に比べても、17年度、18年度とも0.6ヶ月良い結果であり、先進事例(中央畜産会調べ)に比べても17年度は0.5ヶ月、18年度は0.4ヶ月短い結果となっている。これは経営主いわく「子牛には母乳が一番であり、早期離乳は母子ともに大きなストレスを与えている。また、しっかりと運動・日光浴させることでストレスが少なくなり発情も確実に来る」という独自の強い信念に基づいたものである。 また、天候や季節、人の都合で給餌時間を変えることは大きなストレスを与えると考えており、給餌時間は年間を通じて朝6時と夕方4時に、必ず同じ時間に行うことが繁殖成績の向上に繋がると確信している。 さらに個体管理を徹底して行っている。具体的には独自に作成した管理台帳で細かくチェックしている。牛舎は100頭規模のフリーバーン方式であるため、個体管理に朝夕の飼料給与も含めて各々2時間をかけて管理し、加えて毎晩10時に巡回を行うなど徹底した個体管理を行っている。 (2)放牧を活用した低コスト生産による経営の安定 成雌牛は家畜保健衛生所の妊娠鑑定後放牧している。飼養頭数の40%を近隣にある共同牧野の放牧することで飼料費が節減され、十分な運動・日光浴により足腰の強い健康な牛づくりができる。これも繁殖成績の向上に繋がっていると考えている。 また、生産コストの一番大きなウエイトを占める購入飼料費は、18年度牧草の生育が悪かったため購入依存率が若干高くなり、成雌牛1頭当たり89千円の実績であった。前年度は69千円と低コスト生産を実践している。 これにより出荷子牛1頭当たり所得が179千円、県の先進事例(中央畜産会主催 平成15年度畜産経営管理技術発表会 生産局長賞受賞事例・実績の分析結果の比較値)と比べても38千円も高い結果となっている。 また放牧を実施していることで、成雌牛1頭当たりの投下労働時間も54.8時間と、県の先進事例の84.4%程度と労働効率が高い実績となっており、放牧の活用に加えて粗飼料自給率95%の高い自給率が安定した畜産経営となっている。 これによりコントラクター部門を安定的に維持している。 (3)粗飼料自給率100%に向けて 肉用牛部門の粗飼料対策として、自給率100%に向けて近隣の水田4.1haを借り入れ、冬はイタリアンライグラス、夏はスーダングラスを作付けしている。また生産コスト低減のため、前述したとおり、共同牧野45haの管理・収草作業を受託し、オーチャードグラス主体の牧草地20ha分を、管理・作業料として無償提供を受けている。この他放牧を含めた粗飼料の自給率は95%に及んでいる。自給率の内訳は、スーダン・イタリアンで25.7%、永年牧草で52.2%、放牧は16.7%となっている。 今後は子牛用の良質粗飼料の生産確保に目処が立てば、粗飼料自給率100%も可能と考えている。 (4)迅速かつ的確な経営管理 設立以来9年目で4部門の事業を展開するまでに成長した。これは部門収支を的確に把握し、問題点の早期発見と改善策の検討を行ってきた結果と考えている。 コントラクター部門の活動維持のため平成12年より始めた繁殖牛の預託(飼い賃方式)の預託条件が厳しくなったため、18年3月に契約を解除したのも部門収支を把握したことによる一例である。 預託部門は廃止としたが、経営安定のため繁殖部門の増頭と肥育への参入による一貫経営への取り組みを開始している。 ちなみに財務管理を担当する構成員は、独学で簿記を学び自らが各部門の財務管理を行っているため総合的な経営判断が可能となり、スムーズな経営方針の決定に役立っている。 |
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■グリーンストック八幡事業展開図 |
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■地域農業や地域社会との協調・融和のために取り組んでいる活動内容 |
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グリーンストック八幡は設立当時よりコントラクター部門を主体に、肉用牛部門の2本柱の経営である。コントラクター事業は前身の八幡農業生産組合当時より玖珠地区を中心に、畜産農家と水稲農家から作業受託することにより、この地区の農業 経営の存続と高齢化と労働力不足による休耕田の進行を防ぎ水田の存続に貢献している。グリーンストック八幡の受託作業の内容は以下の通りである。 (1)飼料作物収穫受託作業 飼料作物収穫受託は水田裏作のイタリアン、転作田のスーダンの刈取・反転・集草の作業を受託。委託者は高齢者や女性の小規模畜産農家から大規模畜産農家までと幅広い。また永年牧草の収集はグリーンストック八幡設立当初からの中心的な作業で、平成15年までは56ha受託していたが平成16年に1牧野(11ha)の受託をやめ45haとしたが、平成19年から新たに1牧野(10ha)の作業を受託した。45haの永年牧草収集の作業料として20ha分を現物でもらい繁殖牛に給与している。また、共同牧野採草地の肥料散布、播種作業も行っている。 ○過去5年間の飼料作物収穫受託推移
(2)稲わら収集 稲 わら収集は、設立当時より平成16年までは近隣の地区を中心に行っていた。平成16年に相次ぐ台風により玖珠郡内の水稲は甚大な被害を受け、肉用牛の飼料用稲わらが大幅に不足し、県、町、農協が協力し玖珠町より50km離れた県内随一の米・麦の産地である宇佐平野の稲わら確保に取り組んだ。当時の収集作業をグリーンストック八幡が行い、稲わら不足に悩む畜産農家へ供給し急場をしのぐことができたが、それをきっかけに、宇佐平野での稲わら収集受託を行うようになり平成17年度には収集面積が前年の2倍となっている。18年度は玖珠管内が24ha、宇佐地区が15ha計39haの収集を行い、作業は集草、梱包をし、現場で渡す方法をとっている。稲わら入手方法は堆肥との交換と反当り4,000円で買い上げる方法があり、玖珠管内での収集は堆肥交換、宇佐平野での収集は買い上げとしている。収集した稲わらは、1ロール(直径130cm重量約120kg)3,600円(ラップ代は別途)で県内、県外(宮崎、鹿児島、山口)の畜産農家へ販売している。 ○過去5年間の稲わら収集推移
(3)水稲作業受託 水稲作業受託は、耕起、移植、収穫、肥料散布までを受託している。稲刈りにおいては平成14年から比較する急激に増えているが、これは、高齢化により作業委託がふえた為である。 ○過去5年間の水稲作業受託推移
(4)粗飼料販売 杵築市の肉用牛経営農家に阿蘇市の酪農家が生産するロールを仲介し毎月定期販売を行っており幅広い活動をしている。 |
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■今後の目指す方向性と課題 |
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1 コントラクター部門の方向性と課題 (1)多頭農家のための粗飼料確保 今後も肉用牛農家の多頭化・大規模化が進む中で、労働力不足により粗飼料生産がますます困難な状況が考えられ、良質粗飼料の需要は高まると思われる。 本組織においても増頭を計画しており、自給飼料の確保が課題となる。具体的な対策として、裸地等が増え収量の低下している公共牧野を、昨年導入した不耕起播種機により簡易更新を行い、牧草収量の向上を図る。 また、良質な国産稲わらの確保は、安全な粗飼料及び防疫面からも重要性は高まっている。本組織の活動は耕種農家と畜産農家の架け橋となる存在として重要な役割も担っている。 (2)地域資源を活用したコントラクター事業の拡大 高齢化により耕作放棄地の増加が予想される中、水稲受託の拡大や耕作放棄地における放牧の実施等により地域資源を積極的に活用していくこととしているが、現状の規模及び人員では、コントラクター部門のみでの組織運営は難しい状況にあり、部門収益性を如何に高めていくかが今後の課題である。 本組織の代表者は「大分県コントラクター協議会」の現会長であり、これを通じて新しい情報等を利活用して当該事業を拡大するなど、収益性を高めながら近隣のみでなく地域を越えた活動の展開を図っていく予定である。 2 肉用牛部門の方向性と課題 (1)一貫経営への取り組み 繁殖牛の育種価を向上させるには肥育成績の分析が不可欠であるが、本年10月より代表者の長男が社員として参画し、4人の体制がとれることとなり、肥育部門の強化を図る計画をしている。 現在の飼養規模 繁殖牛90頭、育成4頭から、繁殖牛100頭、育成20頭、肥育54頭の 一貫経営を目指す。 (2)繁殖成績(一年一産)の持続(継続は力) グリーンストック八幡の経営理念である「牛へのストレス ゼロを目指す」を常に継続させることで、一年一産の安定した飼養管理を実践し、継続することが所得の向上につながり、安定した経営が可能となる。 |
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■PHOTO |
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