有限会社ミルクファーム首藤
大分県臼杵市

■経営の概要


本牧場のある臼杵市は、平成17年1月1日に臼杵市と野津町が合併して新しくできた市である。本市の東側の海岸線は、日豊海岸国定公園に指定されておりリアス式特有の風光明媚な景観か広がり、南西部は、比較的険しい山稜が続き1年を通じて温暖な地域となっている。
農業を見ると、海岸丘陵地帯では柑橘類・平坦地では水稲・葉たばこ・野菜、その周辺部では、畜産と言った多彩な農業が行われている。
農家総戸数は、2,614戸・耕地面積は、2,540ha・農業粗生産額は、66億6千万円となっており、内畜産の算出額は、15億1千万円と全体の23%を占めている。

■経営の推移


年次 作目構成 頭(羽)数 経営および活動の推移
S22

S38



S42

S46



S48


S52


S60


H元


H 2

H 7

H 8

H10

H12

H13


H14

H15



H16

1頭

15頭



20頭

20頭



25頭


30頭


55頭


70頭


70頭

80頭



70頭



70頭


70頭





70頭
祖父が乳牛1頭を購入し酪農経営が始まる。

父が大学を卒業し就農する。
当時よりフリーバーン方式による飼養管理を実践する。(この年に牧場の裏を流れる一級河川が氾濫し大洪水の被害を受ける。)

本人(長男 稔氏)生まれる

大洪水が原因で大分市戸次から大野郡野津町(現在の臼杵市)に移転する。移転当初は、簡易アブレストパーラー施設(4頭)と飼料給与施設のみを建設し、放牧での経営を再スタートさせた

労働力確保のため、一般公募で大学生を雇用する。
この頃から現在の法人経営の基礎ができていく。

規模拡大のため、牧場裏山を2ha造成し、自己資金・自家労力で牛舎の建設を始める。(第1期)

第2期のフリーバーン牛舎の建設と増頭を行うと共に、オリジナルな簡易アブレストパーラーも併せて増設した。(全頭24頭分)

昭和48年より雇用による経営形態を実践してきており、消費税の導入を期に法人化へ移行する。

本人大学を卒業し就農(ミルクファーム首藤)

環境保全対策として堆肥舎を整備する。(切返堆肥舎 120u)

三男大学を卒業後 就農(ミルクファーム首藤)

(社)日本法人協会に加入する

日本法人協会が実施するインターンシップ農場に登録

インターンシップ研修生を受け入れ、研修生との交流が始まる。
牧場周囲の転作田を活用し環境美化のために、ヒマワリを植える。

堆肥舎の増設を行う。(切返堆肥舎 480u)

次男サラリーマンを辞めて就農(ミルクファーム首藤)
町内の人々とグリーンツーリズム研究会を発足させ農泊の指定も受け
牧場を開放して、コスモス祭りなど消費者との交流を行う。(転作田のヒマワリをコスモスに植えかえる。)
本人(長男稔氏)結婚

■労働力の構成


区分 続柄 年齢 農業従事日数 年間総労働時間 備考
日数 うち畜産部門
構成員 63 250日 250日 819時間 搾乳・堆肥処理
62 50日 50日 120時間 経理業務
本人 37 340日 340日 1,929時間 飼料給与・堆肥販売・交流企画
31 340日 340日 2,210時間 搾乳・哺育・育成
従業員 35 340日 340日 2,210時間 搾乳・哺育・育成
臨時雇用 延べ人日   24日    
労働力  計 5人 1,320日 1,320日 7,288時間   

経営の実績・技術等の概要


期間   経営実績 畜産協会指標
経営の概要 労働力員数
(畜産)
家族(人) 3.6  
雇用(人) 0  
経産牛平均飼養頭数(頭) 67.8  
飼料生産用地延べ面積(a) -  
年間総産乳量(kg) 527,019    
年間総販売乳量(kg) 514,647  
年間子牛・育成牛販売頭数(頭) 21   
年間肥育牛販売頭数(頭) -  
収益性 酪農部門年間総所得(千円) 16,254   
経産牛1頭当り年間所得(円) 239,737 220,000
所得率(%) 30.4 25.0
成雌牛1頭当り 売上高(円) 788,994   
売上原価(円) 566,840  
うち購入飼料費(円) 365,887  
うち減価償却費(円) 66,484  
うち労働費(円) 115,982  
生産性 生乳生産 経産牛1頭当り年間産乳量(kg) 7,733 8,000
平均分娩間隔(ヵ月) 13.9 13.0
受胎に要した種付け回数(回) - 1.5
牛乳1kg当り平均価格(円) 96.98  
乳脂率(%) 4.07 3.5
無脂乳固形分率(%) 8.84 8.3
体細胞数(個/ml) 31.5  
細菌数(個/ml) 3.25  
粗飼料 経産牛1頭当り飼料生産延べ面積(a) - 20
借入地依存率(%) -  
飼料TDN自給率(%) - 35
乳飼比(育成・その他含む)(%) - 35
経産牛1頭当たり投下労働時間(時間) 110.3 115
安全性 総借入金残高(期末時)(万円) 440  
経産牛1頭当り借入金残高(期末時)(円) 64,956  
経産牛1頭当り年間借入金償還負担額(円) 8,791  

土地の所有と利用状況


  面積 飼料生産利用面積 備考
実面積 うち借地面積 延べ面積 うち借地延べ面積
耕地 水田 - - - -  
転作田 200a - - -   
500a - - -  
未利用地 - - - -  
700a - - -  
草地 個別利用地 - - - -  
共同利用地 - - - -  
- - - -  
野草地 - - - -  
山林原野 - - - -  

家畜の飼養・出荷状況



品種区分 経産牛 育成牛 子牛
期首飼養頭数 - - -
期末飼養頭数 66頭 34頭 -
平均飼養頭数 67.8頭 37.9頭 -
年間出荷頭数 - -  21頭

施設等の所有利用状況


種類 棟数面積
数量/台数
取得 所有区分
金額(円)
畜舎 牛舎1
牛舎2
牛舎3
牛舎4
牛舎5


 
1995
2000
2001
2002
2004

6,797,651
222,5750
1,421,065
687,435
870,000

施設 鉄骨パイプ
社宅設備

  1994
1990
220,000
2,200,000


機材 フォークリフト
かくはん機
トラクター
ダンプ
スバル軽貨物
ホイルローダ
ボブキャット
ミルカー自動洗浄機
ポンプモータ
ポンプ
足場パイプ
1台
1台
1台
1台
1台
1台
1台
1台
1台
1台
1式
1991
2000
2002
1991
1990
1996
1997
1994
1999
1999
1990
300,000
3,200,000
367,5000
2,700,000
1,000,000
4,120,000
2,310,000
300,000
302,820
161,043
53,291


経営実績を裏付ける取り組み内容等


牛にも環境にもやさしい飼養管理

 昭和52年に、牧場裏山を2ha造成し、自家労力でフリーバーン牛舎を計画的に増設していく。この時から牛にやさしい牛舎づくりとして、1頭当たりの面積を通常の3倍(35u/頭)近く確保することにより、牛へのストレスの軽減や広い空間での自然な暑熱対策にもつながる。また、1頭当たりの面積が広いことから、敷料(おが屑)も少ない量で経営的にもコスト低減が図られている。

低コスト経営への強い信念

 平成元年の消費税導入を期に、法人化を実施した。経営は、係数で確実に管理し分析をする必要あるとの強い信念のもとこれまで、確実な投資を実践している。
 そのような中で、投資コストのかかるミルキングパーラー施設を移転当初よりオリジナルなアブレストパーラー方式で規模拡大後も、改善を加えたアブレストパーラーを増設し24頭の搾乳を可能とした。
 また、現在の牛舎は、高台にあり搾乳時には100m程離れた下のアブレストパーラーまで朝・夕牛を移動させている。この時牛たちは、コンクリートで簡易舗装した通路を歩く。それにより通常年1〜2回行う削蹄を全く実施しなくてもよい。
 成牛舎・育成牛舎においては、廃材や間伐材・建築用単管を活用して自己資金で可能な範囲の規模拡大を行っているが、特に、自分たちで造る事は、牛のことをはじめ飼養管理がわかっているからこそ的確で安い牛舎が造れている。簡易な施設であるため、後の改造も容易にできる利点もある。

新しい酪農交流(ありのままの交流)

 現在の県内の酪農経営体で、消費者に開かれた牧場は非常に少ない。当牧場は、消費者との交流として、町内の人たちとグリーンツーリズム研究会を発足させ農泊の指定も受け、牧場の入り口の転作田にコスモスを植え、各種交流会(年4回)やコスモス祭りとして牧場を開放して街部の消費者と毎年交流を図っている。将来の可能性を持った若者を平成13年度より日本法人協会の紹介を受け、インターンシップ研修生として受け入れ、地域の農業者や人々と連携をとって農業・畜産の意義や食育・人生観など、「人と人とのつながりや暖かい心を感じ取れるように」ありのままの姿を見てもらうことが大切だと考えている。
 また、地域の野菜農家や園芸農家との交流は、堆肥を活用した地域循環型として深い交流を図っている。野菜農家等からの要望にあった良質堆肥を町内優先で販売し、2tトラック(4立方m)で1台2万円とかなり高値での販売を行っている。(全体の80%を販売)
 この良質堆肥は、大分県有機質資材生産者協議会に平成7年度に加入し定期的に成分分析や発芽試験等を行い、販売をしている。平成13年度には、この堆肥を利用したニラ農家が野菜経営コンクールで農林水産大臣賞を受賞した。


環境対策


家畜排せつ物の処理・利用において特徴的な点

 堆肥処理は、省力化を図れている。ふん尿の搬出は3ヶ月に2回程度で充分な状況である。
 これは、牛舎の1頭当たりの施設面積が広い点や、風向きを考慮した牛舎設計で風通しもよい点が上げられ、敷料として戻し堆肥とおが屑を利用しており、おが屑の使用量が極めて少ないことも、低コスト経営につながっている。
 また、大分県有機質資材生産者協議会にも加入し定期的な成分分析や発芽試験を実施している。この良質堆肥を利用して平成13年度には、近隣のニラ農家が野菜経営コンクールで農林水産大臣賞を受賞した実績も持っている。
 牧場の入り口には、土地を無償で提供し近隣農家と直販所を設置し、我が家からは袋詰め堆肥と景観保全のために植えている金明孟宗竹のタケノコも販売している。

家畜排せつ物の処理・利用における課題

 堆肥の販売において、現在一時的に不足する状況が発生しており、農家に待ってもらう事が一つの課題である。また、野菜農家から袋詰めの要望があり検討としているが、バラでの販売で堆肥が足りない状況が現実であり、今後検討課題としたい。

畜舎周辺の環境美化に関する取り組み

 開かれた牧場として、牧場入り口の転作田に30a程のコスモスを植えて、グリーンツーリズム研究会で消費者との交流会も行っている。
 また、20年ほど前より牧場の周囲に非常に珍しく綺麗な金明孟宗竹の竹林が、見事な景観を保ち、防風林としての役目も果たしている。


地域農業や地域社会との協調・融和のために取り組んでいる活動内容


 地域の活性化を目的に開かれた牧場として、イベントを開催し消費者との交流を図っている。
 遊休地の活用も含め転作田にコスモスを6月と9月に2回植え、年々評判を呼び来場者が増加している。また、この時牧場を開放してコスモス祭り(消費者500人)をグリーンツーリズム研究会で開催している。また、研究会では、年に4回程トウモロコシ狩りや、炭焼き体験・コスモス植えなどを実施することで、農業・畜産の理解を深め消費拡大につながる努力をしている。
 畜産への理解を深める活動として、地域の小学生や保育園児の牧場体験や日本法人協会のインターンシップ研修として大学生の受け入れを行い、牧場での家畜の世話や、近隣の野菜農家との交流や町内の人々との交流などにより、自分の人生を自ら積極的に生きていくことの素晴らしさや厳しさが身をもって体験できるよう努めている。
 受け入れた7名の学生から、研修の後手紙を頂いたり、遊びにまた来たりする学生もでてくるほどの深く実のある交流を行っている。
 地域との共存として、堆肥を有機質資材として野菜や園芸農家に販売供給する事で、地域循環型農業を実践している。堆肥の80%は、町内外に販売している。基本的には、地元優先で20軒程度の農家に収めており、価格的には高値であるが評判はよく、高いとの声は聞いていない。堆肥については、自信を持って販売している。
 なかには、家庭菜園程度の野菜を作付けしていた人たちが、堆肥を利用してできた野菜が評判を呼び、土地を借り入れて直販所で販売をするほどの人もでてきた。

今後の目指す方向


 法人経営であるが、現状は家族経営となっている。当初は、外部からの雇用を行っていたが、ここ10年前から、三男が大学卒業と同時に就農し、3年前からは、次男がサラリーマンを辞めて就農したことにより、家族経営になっているため、規模の拡大が迫られている。
 規模の拡大は、自家産牛を基本として更新し、自己資金で対応可能な拡大を図りつつ、経産牛常時飼養頭数で120頭規模を目指している。
 現在、実施している各交流会は、将来的にも内容を充実させ畜産への理解を深めてもらうと共に、消費拡大への道も探りたい。農泊体験をより充実させるために修学旅行生の受け入れを予定している。
 た、生乳の消費が伸び悩む中、自らが加工・販売することも模索している。特に兄弟で酪農という同じ路を選択した以上3人の知恵を結集して新しい経営スタイルを課題として掲げている。


写真で見る牧場

有限会社ミルクファーム首藤 全景 首藤家の家族
フリーバーン牛舎 簡易式パーラー
搾乳を終えて牛舎へ移動 堆肥舎
 
直売所での袋詰め堆肥販売 後継者グループ交流会
コスモス祭り 吉四六祭りにグリーンツーリズム研究会で参加
グリーンツーリズム交流会 研修生からの手紙