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北崎 敏文さん
大分県豊後高田市

■経営の概要



昭和55年頃より大型の水田耕作機械一式を自己資金で装備。

集落の水田耕作を受託し、その代償として稲ワラと収集労力の提供を水田農家より受けて労働力不足の解決を図る。

 平成10年度は13戸、約10ヘクタールの水田耕作を受託。稲ワラ収集期には延べ60人の作業人員を確保し肥育経営の拡大を図った。

 平成10年現在、交雑種去勢のみ常時228.4頭を飼養し、110頭を出荷。

 技肉格付では上物率(4・5率)が60.9%、1頭当たりの販売価格は808千円、総売上88.903千円、所得率31.9%で黒毛和種去勢の肥育経営の成績に優るとも劣らない実績で本県における雑種肥育経営のモデルとなっている。


■経営の規模



区分 続柄 年齢 農業従事日数 備考
  うち畜産部門
家族
(法人)
本人 43 330 300  
43 330 300  
長男 19 0 0 大学生
長女 16 0 0 高校生
73 330 300  
71 250 60  
常雇          
臨時雇      
労働力計 4人 1,240日 960日  


■経営の推移



年次 作成構成 頭(羽)数 経営および活動の推移
S34年 黒毛和牛肥育  3 父が豊後高田市で最初に肥育を始める。特に市農協、農業改良普及所のすすめによると ころが大きい。
S48年 約60 畜舎は4ヶ所に散在する。
S49年 黒毛和牛肥育
ホルス1部
約80 農業高校卒業と同時に就農。後継者資金、青年育成資金及び、自己資金約4,000千円で  600平米の畜舎と家畜導入を行う。畜舎は電柱廃材を主体に越屋根型として、低コストなモ デル畜舎となった。
S50年 黒毛和牛雌を導入してみる 約80  
S52年   約80うち
ホルス10
 
S55年     水田の受託耕作を始める
H元年   約100
哺育20追加
交雑種を哺育に加える
H3年   185 ほぼ交雑種去勢牛に一部ホルスタイン種去勢牛が残る程度となる。
H5年   200 ほぼホルスタイン種去勢牛の導入を中止
自家哺育を中止し、宮崎県の育成業者より交雑種去勢の導入を始める。
H7年   200 ほぼ全頭、交雑種去勢となる。
H10年   232  

■経営の実績



  経営実績 畜産協会指標




労働力員数(畜産) 家族(人) 3  
雇用(人)    
肥育牛平均飼養頭数 肉用牛(頭)    
交雑牛(頭) 228.4  
乳用牛(頭)    
年間肥育牛販売価格 肉用牛(頭)    
交雑牛(頭) 110  
乳用牛(頭)    


肥育部門年間総所得 28,345  
肥育牛1頭当たり年間所得 257,690 161,270
所得率(%) 31.9 23.5
肥育牛1頭当たり 部門収入(円)
うち牛販売収入
   
808,210 645,977
売上原価(円)
うちもと畜費(円)
うち購入飼料費(円)
うち労働費(円)
うち原価償却費(円)
569,737 550,637
209,545 182,545
230,074 266,408
68,969 46,791
14,492 24,146


肥育開始時 日齢(日) 182 55
体重(kg) 190 91
肥育牛1頭当たり 出荷時月齢(カ月) 33.5 26.1
出荷時生体重(kg) 816 697
平均肥育日数(日) 842 799
販売肥育牛1頭1日当たり増体重(DG)(kg) 0.743 0.812
対常時頭数事故率(%) 2.7 2.0
販売牛1頭当たり販売価格(円) 808,210 645,977
販売牛生体1kg当たり販売価格(円) 990 878
枝肉1kg当たり販売価格(円) 1,516 1,343
肉質等級4以上格付率(%) 60.9  
もと牛1頭当たり導入価格(円) 197,000 141,721
もと牛生体1kg当たり導入価格(円) 1,037 1,732


■収入等の状況



区分 種類/品目名 作付面積飼養頭模 販売量 販売額収入額 収入構成比 概ねの所得率
  農業収入 220a   937千円    
           
           
           
うち畜産部門 肉用牛交雑種肥育 228.4頭 110頭 88.903   31.9
           
           
           
農外収入            
合計            

■当期生産費用



区分 総額 肥育牛1頭当たり
種付料    
もと畜費 23,050,000 209,545
購入飼料費 25,308,152 230,074
自給飼料費    
敷料費   消耗諸材料費に含む
人件費 雇用    
家族 7,586,600 68,969
7,586,600 68,969
診療・医薬品費 416,195 3,784
光熱水費 1,948,801 17,716
燃料費   消耗諸材料費に含む
原価消却費 家畜    
建物・構築物 283,588 2,578
機器具・車両 1,310,546 11,914
草地   0
1,594,134 14,492
修繕費 1,138,490 10,350
小農具費 370,832 3,371
消耗諸材料費 2,023,875 18,399
賃料料金その他 30,000 273
当期生産費用合計 63,467,079 576,973
期首飼養牛評価額 46,204,000 420,036
期中飼養牛評価額    
期末飼養牛評価額 47,000,000 427,273
副産物価格 0 0
差引生産原価 62,671,079  
肉牛出荷1頭当たり生産原価   569,737

■損益計算書



区分 総額 肥育牛1頭当たり



子牛販売収入    
育成牛販売収入    
肥育牛等販売収入 88,903,000 808,210
堆肥等販売収入    
その他 88,903,000 808,210
   




期首飼養牛評価額 46,204,000 420,036
当期生産費用合計 63,467,079 576,973
期中成牛振替額 0 0
期末飼養牛評価額 47,000,000 427,273
他部門利用堆肥評価額    
売上原価 62,671,079 569,737
売上総利益 26,231,981 238,473








販売経費 6,242,970 56,754
共済掛金 692,064 6,291
租税公課諸負担 410,376 3,731
事務費 692,455 6,295
雇用   0
家族 39,200 356
39,200 356
その他    
8,077,065 73,428
営業利益 18,154,916 165,045





受取利子 11,614 106
成牛処分益    
その他 2,647,800 24,071
2,659,414 24,176





支払利子 88,330 803
支払地代    
成牛処分損    
その他 5,920 54
94,250 857
経常利益 20,720,080 188,364
経常所得 28,345,880 257,690

■家畜糞尿処理等



経営に伴って発生するふん尿は、次の堆肥センター等に無償で持ち込み堆肥化され、耕種農家に利用されている。

1.高田堆肥生産組合(地区の肥育農家6名で構成)の堆肥舎に持ち込み(自家生産分の約70%)。組合では、組合員の出役(1名あたり年2回)して堆肥の切換を実施し、製品の大半は無償で地元農家に供給。本人からは11戸の水田作委託農家の水田と1部のイチゴ栽培農家(モミガラ堆肥のみ)に無償で供給し、また1部については2トン車と1台2,500円で希望者に運搬。

2.くにさき西部農協堆肥センター
自家生産分の約30%を依頼。
製品は農協が近隣農家には自走式マニアスプレッター(2トン)で耕作地に散布
管外など遠距離にはダンプカーで販売。

施設等の所有利用状況



土地所有と利用状況



区分 実面積 畜産利用地面積 備考
  うち借地





耕地 350 290    
40      
樹園地 0      
390 290    
耕地外 牧草地 0      
野草地 0      
         
0      
畜舎・運動場 50   40  
その他 山林 30      
原野 0      
30      
共同利用地 0      

土地に関わるグループ活動については、上表の「個別経営地」を「共同利用地」に置き換えて記載

家畜の飼養・出荷状況



品種区分 肉用牛交雑種肥育畜(去勢)
期首飼養頭数 232頭
期末飼養頭数 236頭
平均飼養頭数 228.4頭
年間出荷頭数 110頭

地域農業との協調と融和



良質な稲ワラとその収穫期の労働力を確保するために、6戸の水田受託耕作を昭和55年頃から開始した。(現在13戸から受託)これにより労働力的に安定した肥育経営を続けている。

 一方、委託する農家13戸のうち6戸は作業(整地、田植え及び刈り取り)を全面委託している。

 これまでは個人的に集落営農の1部を担って来たが、平成9年6月設立の荒尾地区農作業受託部会の先駆的役割を果たし、設立後は受託農家6戸(うち肥育農家3戸)の中で最も多い面積を受託し、その中核的役割を果たしている。

 今後はさらに集落営農の推進に大きな役割を果たすものと考えられる。

評価を裏付ける経営管理技術や特色のある取り組み


集落の環境的立地条件、労働力及び資本等を考慮した場合、常時300頭程度以上の飼養は無理であることから、交雑種による高品質、高価格を目標とした飼養管理技術に重点を置いている。集落が近いことから畜舎の牛庄が常に乾燥しているよう環境保全にも気配りしている。

1.畜舎の換気に配慮した越屋根型畜舎を県下で最初に設置した。
また、電柱の廃材を利用した低コスト牛舎で県下のモデルとなった。

2.牛の夏場のストレスを少なくするために電気哺虫器を各牛舎に2〜3ヶ所設置している。

3.夏場の食欲低下防止のため冷水を給水。

4.仕上げ牛90頭に毎日牛舎の通路からガゴ(針金の熊手状のものを3mの竿竹の先端に付けたもので1頭2〜3分間背筋をゆっくり掻くこと)を夕方夫婦2人で約1時間実施している。牛の側から競って近寄ってくる状況。

5.郡飼の全房に大型扇風機を設置し、牛床の乾燥を促進していることで、牛体の汚れがほとんどなく、牛舎の臭気がほとんどない。

6.肥育終了時日齢が1,024日(県指標値796日)とかなり長いが、出荷時体重は816kg(県指標697kg)で大きく仕上がっている。さらに、1頭あたりの販売価格も808千円(県指標値645千円)と高く販売しており、県下で他に類を見ない独特の経営である。

今後の目指す方向



平成10年12月期末の飼養頭数は236頭であったが、平成11年7月現在は290頭に増加。本年末には約300頭まで増加させる計画。

 畜舎の収容能力・飼養管理労働力及び稲ワラ収集能力、資本等の関係から300頭程度を上限として当分は現在の交雑種去勢での管理能力を一層向上させ、更なる高品質・高価格、及び、高所得を目標に努力を続けたい。

 なお、水田耕作用機械一式については個人所有から荒尾地区農作業受託部会の機械に置き替え、さらに経営の効率化をはかって行くとともに現在、労働力、品質、価格面から購入に頼っている稲ワラ以外の粗飼料確保については、地域における耕種農家や他の肉用牛経営農家の状況とも併せて、自給体制の検討を図ってまいりたい。